ワガノア バレエ アカデミーでの体験
シンガポールからロンドン経由で向かったロシアへの長旅は17時間にもおよび、疲れを感じながらも、私はロシアのセントペテルブルグにある、ワガノア バレエ アカデミーでレッスンを受けるという、めったにない貴重な体験にただ胸を弾ませていました。
ワガノア バレエ アカデミーのスタジオは、とても広く、また床は前下がりに傾いて作られていたので、初日は少し踊りづらく感じました。しかし、日が経つに連れ、その床にも慣れていきました。また、今迄に習った事のない、いろんなダンスの動きを学べた事がとても勉強になりました。
第1日目、チェン バレエのスタディーツアーメンバー達は、ワガノア アカデミー資料館に案内されました。そこに陳列されていた、古い時代からの有名なバレリーナ達のトウシューズのコレクションは、特に印象深く覚えています。
ツアーの後、ロシア人生徒さん達に混じり、アカデミーの著名な先生方による、ダンスレッスンが始まりました。私のクラシカル バレエ クラスの担当は、イリナ バダエバ先生でした。優しく、且つとても厳しい先生で、私達の限界までチャレンジさせる方でした。例えば、デミポイントは、私の足が完全にオーバーになるまで押し上げなければならなかったし、上半身の体の大きな動きもたくさん学びました。
ターンアウトが十分に出来ていない場合は、即座にピアニストに指示を出して音楽を止め、そのステップが完璧に出来る迄、何度でも繰り返し練習を続けます。時には5セット、同じ音楽で練習した事もありました。先生は、チェンバレエから来ている、私と友人のメーガンの二人をセンターバーの真ん中で練習させて下さり、たくさんの手解きを受けました。 ステップを正しくこなせない時には、私達には全く理解出来ないロシア語で叱られました。但し、時には私達の為に英語で話そうとして下さる事もありました。言葉の障壁はありながらも、私達は先生は勿論の事、他の生徒さん達の優美な体の動きからも多くの事を学びました。
ジムナスティック(体操)クラスの担当は、エレナ ポリブキナ先生でした。このクラスでは、私達が今迄にした事のないコンディショニングやストレッチのやり方をたくさん学びました。必ず、一人か二人の若いワガノアの生徒さん達が私達に見本を見せてくれたのですが、彼らがすると、とても容易にこなしている様に見えるのです。ワガノアの生徒さん達の多くは、まだ私達より幼いにも関わらず、筋肉をかなり鍛えていて、柔軟性も高かったです。このクラスで学んだストレッチの幾つかは、シンガポールに帰ってからも、自分で続けていけると確信しています。
アクティング(演劇)クラスの担当は、アレクサンダー ステピン先生でした。とても面白い、表現豊かな方で、ダンスをしながら、口、手、体を使ったジェスチャー(身振り、手振り、感情表現)をたくさん学びました。
例えば、『I can see you (私には見えるよ)』 や 『Let's dance (一緒に踊ろう)』 では、手の細かいしぐさや、口で輪を描いたり、口で靴ひもを結ぶ等の口のしぐさや表現を学びました。このクラスでは、たくさんのエネルギーを発散しましたが、とても面白く、楽しい、ドラマチックなクラスでした。
このアカデミーで、私は初めてキャラクターダンスのレッスンを受けました。とても刺激的なレッスンでした。このクラスの担当は、バディム シロティン先生でした。私は、キャラクターダンスの練習でバーレッスンが出来る事も知りませんでした。プリエ、タンデュ、ジュテ等、殆どの練習が出来たのです。ヒールの有るキャラクター靴で踊るのは難しく、ジュテやフラッペの練習では何度も足を床に踏み込まなければなりませんでした。
先生が強い情熱と熱意をもって、ステップを見せて下さる姿に引きつけられました。
ワガノア バレエ アカデミーでの昼食は午後2時40分くらいに、いつもカフェテリアで他のアカデミーの生徒さん達と共にとっていました。私は、毎日大きなお弁当箱を持ってカフェテリアに入りましたが、アカデミーの生徒さん達がほんの少ししか食事をしていなかったり、年齢の上のお姉さん達の中には、昼食に下りて来ない人がいるのを見て、恥ずかしく思ったものです。
1日のクラスが全て終わった後、私達はいつも他の生徒さん達のクラスを見学させてもらいました。また、マリインスキー劇場で公演される「くるみ割り人形」のリハーサルをアカデミーのスタジオと劇場の両方で観る機会を頂きました。マリインスキー劇場で衣装でのフルリハーサルを観た時の魅了される様な美しさ、優美さには本当に感動しました。そして、アカデミーの優秀な生徒の幾人かは学校が終わった後に「くるみ割り人形」の公演で踊っているという事を知り、ただ驚くばかりでした。
ロシアのワガノア バレエ アカデミーでの滞在は、私にとって決して忘れる事のない、本当に素晴らしい体験となりました。多くの新しいテクニックも学ぶ事ができました。そして、またいつの日かアカデミーでレッスンを受けられる日が来る事を願っています。最後に、この素晴らしいスタディーツアーへの参加の機会を与えて下さった、チェン先生と私の両親には心から感謝しています。本当にありがとうございました。
八木 利嘉 (Rika TAN)
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